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今回は切なくて頼もしい、男子高校生が主役です!
著者:貴志祐介
発行年:1999年
所要時間:休日の2日で読める本
貴志祐介とは?
1959年大阪府生まれ。
京都大学在学中から小説の投稿をはじめる。
1986年に『凍った嘴』で第12回ハヤカワ・SFコンテスト佳作を受賞する。
1994年に本格的な作家デビューを果たす。
ホラーをはじめ、本格ミステリ、SF小説など幅広いジャンルの作品を発表している。
代表作は『新世界より』、『悪の教典』など。

今回紹介する『青の炎』は映画化、漫画化もされています♪
貴志祐介『青の炎』のあらすじ
櫛森秀一は悩んでいた。
10日前にふらりと現れた、母親の別れた再婚相手・曾根に。
曾根は自宅の1室を占領し、働くこともせず堕落した生活を送っている。
横暴で手が付けられない曾根に、櫛森一家はおびえながら暮らす羽目になった。
母と妹を守るために、秀一は曾根の殺害計画をたてる。
ルールは一つ。
絶対に完全犯罪でなければならない。
17歳の秀才がたてた完璧な計画は成功したかに見えた。
しかし、思わぬ落とし穴が見つかって・・・
最後の1ページまで目が離せない!完璧な計画の切なすぎる幕引きにじーんときます。
おすすめポイント!主人公・秀一の陰と陽の魅力
県内の進学校で勉強も部活も人間関係もそつなくこなし、おそらくちょっと顔も良い。
はっきりと書かれてはいませんが、秀一は学校でいい意味で一目おかれています。
学校では優秀な生徒。
しかし家のガレージでは秀一の”陰”の部分が顔を出します。
友人に頼んで未成年にはNGなものを買って楽しんだり、流行りはじめのパソコンを使いこなしてグレーなサイトをのぞいたり。
表と裏のバランスが絶妙で、人の興味をそそる性格であることは否めません。
高校生にありがちな異性に対する恥ずかしさや、大人への理不尽な反抗はほとんどない。
周りより一歩も二歩も成熟した考えが出来ることも、秀一の評価につながっていました。
そして秀一自身も、自分のかしこさを十分わかっていました。
だからこそ、完全犯罪を実行しようと思い立ったのです。
もし曾根が櫛森家に来なかったら、秀一はどんな大人になっただろうか。
いい大学に入って、いい会社にするっと入るところが想像つきます。
そこそこモテて、母と妹を大事にしながら幸せな人生を過ごせたのではと思います。
曾根の出現で、秀一の人生そのものの軌道がずれてしまったのがすごく惜しい。
秀一のキャラクター設定がかなり凝っているので、ぜひ注目してください!
納得できない!心をえぐる秀一の最後の判断
秀一が大きなリスクをおかしてまで成しとげたかったこと。
それは家族3人の幸せな生活を取り戻すことでした。
曾根を殺す動機は怖がっている母と妹を守りたい、その一心でした。
単純に曾根を追い出せばいいわけですが、離婚を決めたとき曾根はすごく往生際が悪かったそうです。
だから追い出すだけじゃ足りない、この世から抹殺するしかないと秀一は思いました。
家庭に男性が自分しかいないから何が何でもやらねば。
秀一のいきすぎた行動からは、家族を守る父親のような責任者すら感じさせます。
本来こんな面倒ごと、母親が片付けるべきです。
秀一が曾根を追い出そうと悩んでいる姿を見ている以上、放っておくのはまずかった。
しかし母にも事情がありすぐに手をうつことが出来ませんでした。
結果として一番早く手をうったのが、秀一でした。
曾根に対する計画は上手くいったものの、予想外の事態が起こってしまいます。
それをカバーするために、また計画を練り、実行し、嘘をつき、嘘が嘘を呼ぶきつい状況をつくってしまいました。
追い詰められた秀一が、最後に選んだ選択。
母と妹と自分を一番守れる方法ー
櫛森家の3人は、お互い思いやっているのに優しさが少しずつれていました。
家族のために頑張った秀一が一番報われない、そんなこと納得できるでしょうか。
悲しすぎるラストにはハンカチ必須です。
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